散る散る満ちる。

擬人化を含む一次・二次創作もろもろサイト。転載禁止。
感想やいいねと思ったことなど、お気軽にWaveboxへ。絵文字だけでも嬉しいです。

No.103

映画感想:引退後にぴったりな本当に急に一瞬だけ治安が最悪になるほのぼの北アイルランド田舎暮らし映画「プロフェッショナル」を観よう!
作中で死ぬ動物が人間だけという時点で95点くらいつけてしまう人間がなんか言っています、すべてがネタバレ。#映画感想

好きになったキャラ、死んだが?!?!!!
びっくりした、本当にびっくりしました、いままで好きになるような素振りもなかった方向性のキャラクタを好きになったな珍しく、と思っていたら途中の全然なんでもないシーンで「あっこいつ死ぬな……」と謎の確信があり、本当に死にました。
そのシーンもカルフォルニアに行きたい、という夢を語っているときでもなければ主人公から今まで貯めてきたお金を託されて「殺しなんかやめて夢を追え」って言われてるシーンでもなく、どこだっけ、猫を膝の上に乗せて寝こけてるシーンだっけ?なんか本当にその辺りの本当に普通のシーンで何故か確信を得たので俺は多分人間から漂ってくる死の気配にあまりにも敏感だし、なぜかその危うさに惹かれる感性を持っているのだと思います。本当に最悪である、己が。

今回も特に前情報なしで観にいったので時代設定が1979年なんだ!?になり、やたらとアナログなデザインのタイマーが可愛いすぎてにこやかになり、その用途が最悪すぎて「最悪……」って言ってたりしました。物心つく前の、しかも海外が舞台の場合は時代考証が正しいのかどうかすらもまったくわからなくて新鮮に受け止められるので好きです。
だもんでケビン(上記の死ぬキャラです)が一瞬映るシーンで「治安が最悪のビートルズみたいな人いた…………」って思ったそれがまああんなに良いキャラだと思わなくてあれよあれよと「こいつ……好きだな……」になったら死にました。なんで?????????本当になんで???????

物語の範囲としてはものすごく狭い範囲の、ものすごく小規模なものなのだろうけれど、人間は善悪どちらか一辺倒をやるには基本的に弱すぎるし、悪の方を選んだ場合に大義や、家族であるとか、ここに放り込まれたからという開き直りや、そういう自分の手には余りあるごくごく大きいものに責任を転嫁して自分自身すらだまくらかして生きていかないといけないんだな、というのを丁寧にやっている物語でしたね。好きです。

それと同時に穿とうと思えば世の中が戦争に傾いている昨今、この善悪の線引きが極薄くて曖昧になっている時勢に、なにを大切にしてなにをないがしろにしてなにを手放して傷つけていくかの責任は、たとえその理由を個人個人が個人個人によらないものへ負わせていたって選択の責任は個人が取るのだ、という本当に大切なことをやっているな、と思いました。
死ぬ前に善いことをひとつかふたつやったところでいままでの罪は帳消しにならないし、だからといってやらなかった善いことはこの世にまったくないことは明確なのでなにか、なにか、なにかを、と自分の中で見失って擦り切れてしまった希望に対しての道を探すように縋り付く人間がいてもまったく変なことではないし、人間はその信ずるものによらず救われたいのかもしれない。
そうしてああいった海が近く、寒くて、雲が速く走る土地ではより人間の温かみを持ち寄って寄り添う必要が生活上にあって、そのあたたかみのことを愛と言うんですけれども、過去に与えられなかった愛に飢えているこの物語の登場人物たちはどこまでいってもよそ者だったのだな、と思います。まだロバートに拾われて役目を与えられていた(そしてこれもまた自分の責任を追えない理由の一つになりうる)フィンバーやケビンの方が愛ではないにせよ他人から必要とされる場面を持っていただけマシな気がしてくる。どこへいっても地獄ですけれども。

観終わったあとにすでに複数回言ったんですけど、フィンバーはあのあとあの車のままカルフォルニアにいってなんやかんやありながら地元じゃ負け知らずのクセ強アイリッシュじじいとして中古レコード店名物店主になって天寿をまっとうしてください。猫を飼い、家庭菜園をカルフォルニアでやれ。

畳む

つらつら