擬人化:お台場から愛を込めて砂嵐を越える2011年7月24日初出(Pixiv)文章が久しぶりすぎて震えます、愛され系宗谷さんと地上デジタル放送の話、と、そうやさんの受難。(時代が見える………)#GAS続きを読むまあこの世の中は便利になったもので画面を見ればこのあと自分の耳に悲痛な叫びを流し込むのが誰だか明確になってしまうのが少々うんざりするけれど、ここでこの着信を無視したところであとからふくれあがった面倒ごとが真正面からやってくるのは簡単に予想できたから、小さなうなりを上げる端末機械には心底うんざりさせられる。乗らない気分を不穏な気配と判断して意識だけこちらに向けたせきれいを背中で感じながら、仕方がないので通話ボタンに指をのばす。ぷちり、とあっけない沈みこみがあって、瞬間、「そうやくんちょっと聞いてくれるかい!」耳から少し距離を置いて待ち構えていたのが幸いしてそれほど響かず済んだけれど、やはり大きなものは大きなもので息を一つためてこぼすには十分な声量が通話口から飛び出した。遠くお台場でのんびり余生を過ごしているはずの先代はこの携帯電話という文明の利器を授かってから何かにつけしょっちゅう自分へこうやってさも世界の終わりに面したような悲痛な声で助けを求めてくるのだけれど、内容と言えば大体が第三者から見れば頭の上に乗った眼鏡を探しているような塩梅で、呆れながら助言とも言えないような言葉を二、三与えて終わるのが常だ。そうして今日に限って、今日のこの日のこの時間に限って言われる事と言えばもはや用件は一つしかない。「なんですか」なるべく事務的に、を心がけなければならない関係というのも面白い。それに気づいているのだかいないのだか、それともそれどころではないからなのか、極力の努力をあっさり流して話を続ける。「てれびが!テレビが砂嵐になるって!」「ええ、でしょうね」己の予測が一言一句まったくもって外されなかったことに脱力しながら、電話の向こうで慌てふためくそのようが目に浮かぶ。そもそもあなたはテレビ見るんですか、と聞きたいところだったけれどこれ以上自ら話に踏み入って長電話をするのも本意ではないのでさっさと終わらせるように軌道を修正することにした。「どうしたらいいと思う?これからテレビが映らなくなっちゃうんだって」「でしょうね、以前から言われてたじゃないですか」「昭洋くんが、なんだっけ…”わんせぐ”?とかいうので、あれ、携帯電話でテレビが見られるっていうのを教えてくれたんだけれど、僕のじゃ受信しないみたいなんだ」「でしょうね、簡単携帯ですから」「どうしたらいいとおもう?」「知りません。あなたパンフレット読まなかったんですか」「読んだよ…仕組みは理解したよ…」「それでどうして何の対策も行わないんですか」前もってわかっていることに対してどうしてここまで大騒ぎできるのか、理解の範疇だ予想の範囲だそういったところを全部乗り越えたところで思考するらしい先代の慌てぶりが、それに対して打開策を求められているこの状況がだんだんとイライラに変わるのにもそうそう時間はかからない。「そもそもあなたはテレビ見るんですか、日常的に」「あんまり見ないかな」「けろっと言うな。見ないならそれで良いじゃないですかどうしてそんなに大騒ぎするんです」「でもたまに見たいじゃない、ニュースでそうやくんが出てる時とか」「やめてください、恥ずかしい」ああ、何だってこの人は。しかし少しでもしょんぼりなんて書き文字が後ろに見えるような顔で声で困ってるんだと一言、言われてしまえばどうにかしてどうにかしてやりたいと思ってしまうのも事実でそれはつまり自分の中の唯一の弱みと言っても過言ではなくてそしてそれは大体誰にでも当てはまるらしい。つまるところ自分でなくてもこの電話の内容をそのまま他のどこかへ向けてしまえばこんな冷たい対応ではないもっとあたたかで的確で迅速な対応が受けられるというのに、何だってこの人は、「そうや」「どうしたの、せきれいくん」話し中だけれど、と視線を向ければその先には何とも言えない複雑な顔。「なんだかんだでもう30分は喋ってるぞ。気づいてないから言うけど」「わー、せきれいくんいるの?ちょっとお喋りしたいかもしれない」「ちょっと黙っててください」——ああ、これだから。畳む いいね ありがとうございます! 2023.5.9(Tue) 15:43:09 一次創作,擬人化
2011年7月24日初出(Pixiv)文章が久しぶりすぎて震えます、愛され系宗谷さんと地上デジタル放送の話、と、そうやさんの受難。(時代が見える………)#GAS
まあこの世の中は便利になったもので画面を見ればこのあと自分の耳に悲痛な叫びを流し込むのが誰だか明確になってしまうのが少々うんざりするけれど、ここでこの着信を無視したところであとからふくれあがった面倒ごとが真正面からやってくるのは簡単に予想できたから、小さなうなりを上げる端末機械には心底うんざりさせられる。
乗らない気分を不穏な気配と判断して意識だけこちらに向けたせきれいを背中で感じながら、仕方がないので通話ボタンに指をのばす。ぷちり、とあっけない沈みこみがあって、瞬間、
「そうやくんちょっと聞いてくれるかい!」
耳から少し距離を置いて待ち構えていたのが幸いしてそれほど響かず済んだけれど、やはり大きなものは大きなもので息を一つためてこぼすには十分な声量が通話口から飛び出した。
遠くお台場でのんびり余生を過ごしているはずの先代はこの携帯電話という文明の利器を授かってから何かにつけしょっちゅう自分へこうやってさも世界の終わりに面したような悲痛な声で助けを求めてくるのだけれど、内容と言えば大体が第三者から見れば頭の上に乗った眼鏡を探しているような塩梅で、呆れながら助言とも言えないような言葉を二、三与えて終わるのが常だ。そうして今日に限って、今日のこの日のこの時間に限って言われる事と言えばもはや用件は一つしかない。
「なんですか」
なるべく事務的に、を心がけなければならない関係というのも面白い。それに気づいているのだかいないのだか、それともそれどころではないからなのか、極力の努力をあっさり流して話を続ける。
「てれびが!テレビが砂嵐になるって!」
「ええ、でしょうね」
己の予測が一言一句まったくもって外されなかったことに脱力しながら、電話の向こうで慌てふためくそのようが目に浮かぶ。そもそもあなたはテレビ見るんですか、と聞きたいところだったけれどこれ以上自ら話に踏み入って長電話をするのも本意ではないのでさっさと終わらせるように軌道を修正することにした。
「どうしたらいいと思う?これからテレビが映らなくなっちゃうんだって」
「でしょうね、以前から言われてたじゃないですか」
「昭洋くんが、なんだっけ…”わんせぐ”?とかいうので、あれ、携帯電話でテレビが見られるっていうのを教えてくれたんだけれど、僕のじゃ受信しないみたいなんだ」
「でしょうね、簡単携帯ですから」
「どうしたらいいとおもう?」
「知りません。あなたパンフレット読まなかったんですか」
「読んだよ…仕組みは理解したよ…」
「それでどうして何の対策も行わないんですか」
前もってわかっていることに対してどうしてここまで大騒ぎできるのか、理解の範疇だ予想の範囲だそういったところを全部乗り越えたところで思考するらしい先代の慌てぶりが、それに対して打開策を求められているこの状況がだんだんとイライラに変わるのにもそうそう時間はかからない。
「そもそもあなたはテレビ見るんですか、日常的に」
「あんまり見ないかな」
「けろっと言うな。見ないならそれで良いじゃないですかどうしてそんなに大騒ぎするんです」
「でもたまに見たいじゃない、ニュースでそうやくんが出てる時とか」
「やめてください、恥ずかしい」
ああ、何だってこの人は。
しかし少しでもしょんぼりなんて書き文字が後ろに見えるような顔で声で困ってるんだと一言、言われてしまえばどうにかしてどうにかしてやりたいと思ってしまうのも事実でそれはつまり自分の中の唯一の弱みと言っても過言ではなくてそしてそれは大体誰にでも当てはまるらしい。つまるところ自分でなくてもこの電話の内容をそのまま他のどこかへ向けてしまえばこんな冷たい対応ではないもっとあたたかで的確で迅速な対応が受けられるというのに、何だってこの人は、
「そうや」
「どうしたの、せきれいくん」
話し中だけれど、と視線を向ければその先には何とも言えない複雑な顔。
「なんだかんだでもう30分は喋ってるぞ。気づいてないから言うけど」
「わー、せきれいくんいるの?ちょっとお喋りしたいかもしれない」
「ちょっと黙っててください」
——ああ、これだから。畳む