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2024年8月の投稿1件]

2024年8月22日 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

地球上のあらゆるものごとは地球が先、人間が後を「ツイスターズ」で味わおう。
使える映画チケットが今月末までだったことに昨日気がついて慌てて予約したんですが、そんな慌ただしさの中で予約する映画じゃなかったです。全てがネタバレ。#映画感想

竜巻の映画である、ということと、竜巻を追いかける科学者やそれ以外の人間集団がいる、ということと、人生がお祭り騒ぎ続行中になった直接的原因映画「トップガン マーヴェリック」に出ていた俳優さんが出ているために決めました。竜巻の映画、本当にただそれだけなんですけれど、そもそも自然現象ってたまたま発生する場所に勝手に人間が繁殖していっただけなので、自然現象を人間側がどうこうできるわけもないと思っているんですが、ただ俺たちが常日頃あまり意識はしないものの地震や台風に備えているようにやってくるときは本当に突然で、出会ってしまえば根こそぎ失ってしまうから「防ぐ」と言う意味合いで立ち向かう必要はあると思っています。という思っているを抱えたまま観たら作中で完全に同じことをやっていて「だよなあ……」ってなりました。

ケイトが本当に雄弁に表情で語る人間で、あの悲惨な事故(事故?なんだろう、事故でいいのかな、もっと違う言葉が相応しいような気がする)から逃げ出すようにニューヨークにいて色味のないスーツを着て職場ではまあそこそこうまくやっているけれど本当のところはずっと遠くにあって、そこにふと現れたかつてのチームメイトからレーダーの話を聞いたときの少しだけ見開かれた瞳にさっと美しい光が照り返るあの表情、本当にすごい。
冒頭で起きたできごとを起因にして自分をずっと苛んできて重くのしかかっている何か、自分で「永遠」と決めてしまった苦しみがありながらも揺れ動いた心があの一瞬で全部わかる。そしてそれは正面にいたハビにも明確に伝わったはずで、ハビはきっとケイトのそういうところが好きだったんだろうな………と最後まで観ると思います。ハビ……良い人間だよ…………。

いやしかし竜巻、無理すぎませんか?あまりにも。自然現象として到底勝てない。勝てないけどそこに生きていくしかなかったらそこで生きていくしかない。日本だとまあまあの頻度で地震があるので建物だって耐震基準とかあって、もちろんそれすら上回ってしまうこともおおいにあるけれども、耐震基準のしっかりした町営住宅に住んでいた祖母が北海道胆振東部地震の震度6強地域にいて建物が無事だった経験を持つ人間としては構造がしっかりしていればある程度(本当にある程度。過信には至らず、常に備えは必要だと思うけれど)、ある程度の安心材料として機能するんだなという認識はあって、でも竜巻は違う。全然違う。そう言うの関係なく全部根こそぎ持っていく。どうした重力、お前もっとなんかしっかりせえよって思う。怖い。本当に怖い。本当にすべてが失われる、文字通り、すべて。

それだけの恐怖を描いていながらも、人間が自然現象の圧倒的な力に対して抱く美しいと思う感情を否定しない物語のバランスが絶妙で好きです。好きなものだから知りたい、メカニズム解明したい、の欲求の先に人間の善性が乗っかると竜巻を消滅させたいになる。そうでない場合のことは作中でははっきりとは描かれなかったけれどうっすらと匂わせるだけには十分な情報が与えられる。不動産って本当に嫌われる要素を抱えた商売ですね、人間が地に足をつけて生きていく限り。スコットたちはあれからどうしたんだろう、いつか自分たちの中に決定的になかったもののことに気がつくんだろうか、ハビをチームから失って。

ケイトやタイラーのように恐ろしい威力を持ったものに対して向き合っていきたいと、恐怖の前に思った人間たちがいるからこそ得られる情報というのは確かにあるだろうし、そこは常に危険である最先端なのでもちろん危ないことも多々あるのだけれど、我々は直接的に知り得ない彼ら彼女らの行動によって救われているところがあるのだろうな。あぶないことはあんまりしないでほしいけど、他人の人生には何一つ口を出せる部分はないからな、人間全員が。そういう意味ではケイトのご母堂、かなりケイト本人の意思を尊重して言いたいことがいっぱいあるだろうに人間対人間の関係を維持しようとしていて本当に良かったです。この文章を書いている人間は家族といえど他人なので人間同士の間に必要な最低限の敬意を持て、という家庭環境で育ってきたので、あの振る舞いはグッとくるものがありました。粗雑だったりするわけじゃないんだよね、本当に大事だから心配だけれど、その心配や「家族である」という関係性の要素は、その人を尊重するときに場合によっては引っ込めておかねばならないんだよね。
自分は一生自分の肉体から別の命の個体を抽出することないんだろうなと決めてしまっているのでわかりませんが、俺は自分の親しい友人やなんかがケイトの状況にあったら本当にものすごくものすごく心配するし、毎回毎回世界中のあらゆる神様やそれに類するものに無事を祈るけれど、たぶんどこかでずっと覚悟をしているし、お腹の底の方にはずっと力が入っていることになるんだと思う。あのご母堂はずっとそれをやってきているんだな、ろくに連絡もよこさない自分の娘に対して、ずっと。本当に良い。

タイラーのチームも本当に良くてさ……ベンも含めて……。一見はやりのYouTuberでライブ配信者で、自前のグッズもやたらあったりして、ドローンなんかも駆使していて、竜巻のなかで花火を打ち上げたりするようなめちゃくちゃチーム(やっていることは本当にシンプル無茶で苦茶です)なんだけどお互いへの敬意と尊重があって、さっきからずっと人間対人間の敬意と尊重の話してるな、俺。いやでもとても大切なことで……。
好きなところはブーンがタイラーに「いま考えてるから撮るな」と言われて素直に引くところと、ベンが最後に自分のカメラを置いて避難誘導に駆け出すところと、ブーンが持ってるなんか変なガジェットです。あの撮影用ガジェットがあることで一瞬で「こういう機器を使うことも厭わないです」という姿勢を見せるのあまりにもノンバーバル言語がうますぎる。
ベン〜〜〜〜〜!おっかなびっくり水溜りすら爪先立ちで避けながら恐る恐るだったベン〜〜〜!!!!!あのときのケイトの後ろ姿を撮る気持ち、わかるよ……そんでそのカメラすら置いて住民の非難誘導に走るベン………好きだ…………………………エンドクレジットの端々に挟まれる記事、あれはベンが書いたんですよねたぶんね、そうやって彼ら彼女らのことを伝えていこうと決めたのだ……ベン……メガネの予備は作っておきなよ……メガネ必要人間、失うと視界の全てを失うから…………。

ケイトとタイラーも同じものを見ている同士で本当に良かったですね。頭が良い人の会話は聞いていて心地よい。最初は意図してそう描かれていたのであったように「なんやこいつ……」の気持ちが強いくせに、ロデオ会場からひとびとを避難させるとき絶対にタイラーはその人の背中に自分の手を当てているんですよね……気遣いの…当たり前としての気遣いのふるまい………!!!!その前も犬を探すことを優先するし、そのときはブーンだってカメラを置いている。チームの役割分担が本当に自然にそれぞれの得意なことで分けられていて、全員に善性がある。良い。あのあたりからハビとタイラーの対比における表面上の風向きが変わりだすの構造としてうまいなあ。
でも一概に竜巻に巻き込まれて失った土地をいくらかの金銭で手放すという判断も完全に悪いわけではないのだよな……ああいうときにまとまった金額ってどうしても必要になるし、保険だなんだはあったとしてその支払いが充分で即時に行われるかというとそのときにならないとわからないし、それでいえば売買時の契約内容によるけれどある程度の金額をポンと出してくれる不動産屋さんはその場その場で適切であることもあるんだろうという想像はできます。ただ、自分の生まれたところが定住することを前提として文明を発達させてきていた場合、その土地を簡単に離れられるかと言う課題はもちろんある………この辺はもう行政の話なので触れませんが、作中でもたぶんそういった余白のために(尺のためにと言ってしまってはあまりにもだから)不動産側を徹底した悪とは描かなかったのじゃないかな。わかりませんけれど。

ところでタイラーくんはちゃんと空港のロータリー道路の修繕費用、払いましたか?あそこだけ急な行動力が爆発するから最後の最後で大爆笑しちゃった。大好きです。

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