映画感想:「オデッセイ」で人間の知性と善性を浴びよう。主人公は1年半シャワー浴びてないけど俺たちは2時間で余すところなく人間の知性と善性が浴びられる。すべてがネタバレ。ダクトテープを持て。#映画感想 続きを読む「いつか観るか」の箱に入れておいたのをようやく観ました。なんかちょいちょい配信から消えるので……これは配信作品にずっとつきまとうヒリついた緊張感ですな。冒頭から関係ない話をする。はい。そもそも俺は人間の知性と善性に基づいた行動をする人間の映画が好きで(爆発とか膨大な人死にとかは別カテゴリです)、極地(極限の土地の意味。もちろん宇宙も含む)においての集団行動ができる人間個体には基本的にそれが備わっているのでその時点で爆裂に愛なんですが、「オデッセイ」は地球の原理も通用しないような火星という土地において人間が今まで培ってきた先人たちすべての知識の結晶をときおり「そうはならんやろ」のエッセンスでやっていくので本当に大好き映画になりました。人間の顔がすぐに識別可能にならないので最初にアンテナにぶつかって吹っ飛ばされたのがマークだとぱっとわからなくて、ヘルメットで顔面の視認領域が狭いのと砂嵐の視界の悪さで完全にやられているのあまりにもリアル……と一人で画面の前で息止めてました。息をしろ。潜水艦映画とかで水が入ってきて視覚的に空気がなくなるのを見るのがダメなので、思ったよりあっさりと置いてきぼりにされたのは船長の判断に感謝したんですがその後のマークの覚醒からセルフ手当までの間はずっと眉間に皺が寄っていました。作中のみなさんと匹敵するぐらい眉間に皺寄せてた自覚がある。あと最初はムキムキだったマークが後半でMAVに乗って宇宙服に着替えるあたり、もうガリガリになっちゃってて宇宙空間で一人でぎりぎりの生存をする過酷さが目に見えて腹筋に力が入った。生活ではなく生存をする日々のこと。宇宙ステーションとか構造物として大好きなのでその辺が垣間見えるあたりはずっとにやけていたし、マークが自分の死を両親に伝えるのは船長にお願いしたいってメッセージを残しているところで泣いたし、砂と岩だらけの火星をローバーで進むマークをはるか上空から写したなんでもないあいまのシーンで以前に観た「おやすみオポチュニティ」を思い出して爆裂に泣いたし、宇宙空間に設置した基地で音楽流すのもあまりにも人間の祈りすぎて泣いた。有機無機にかかわらず、人間に最後に残された善性は祈りになるんだなあ、と思いました。祈りとは人間に残された最後の、本当に最後の足掻きを一押しするもので、それを叶えるのは実際にその場にいる人間であって祈っている遠くにいる人間には何の関係もないのだけれど、それでも遠い宇宙の目には見えないところで起きていることがらについて、そこに自分たちと同じ人間のいのちが一個あって、そのたった一つに手を伸ばすことを諦めないのはこの世に存在するありとあらゆる言語すら届かない域にある人間同士の底の底の一番底にある希望って名前の祈りなんだよなあ。LotRのオタクなので途中で急に指輪物語ネタ挟まったの笑っちゃったし、そこにおるのショーン・ビーンやんけ……でニヤニヤした。珍しくショーン・ビーン氏が死にませんでしたね。へへ。あと登場人物全員頭がいいので出てくるセリフもすらっと頭が良くて「あ〜たまがいい〜〜………」ってずっと言ってました。可否を問うてまず方法が返ってきたとき「で、それって英語で言うとなに?」って言えるのすごくない?みんなずっと英語喋ってんのに?めちゃくちゃ良い言い方するやんけ……好き…………そんで全員の返事がイエスなのも好き………あんなに自分の子供に会えるのを楽しみにしていた人がスッとイエスを返すの、好き。自分の今後の人生で、そうだよね、助けられるかもしれない人間を助けないって選択肢がある人間は宇宙にそもそも来られないよな。なのに急に海事法を持ち出して宇宙海賊を名乗り出すの、ほのかな精神的ストレスによる狂気が滲み出ていて好きだし、船のオタクをやっているので満面のにこやかが出たし、自分たちが立っているのは確かに地球ではないにせよ地表であるのに、だからこそ宇宙の全てを「海」と解釈しているの本当に人間が地球上から離脱できていない、根付いている感性で愛した。人間がこの水の惑星から出立しそこを変える場所だと認識している限り、すべての科学は宇宙を空ではなく海に分類するのだ…。ダクトテープ先輩が相変わらず万能アイテムの扱いで毎度毎度活躍するたびに手叩いて喜びました。だ〜ははは!!!いけんのかい!!!!!!!マークが終盤で自分の足元にある新芽に火星でじゃがいもの新芽にかけたのと同じ声掛けするの、全人類が好きな要素のたたみかけで本当に良かったですね。ところでマークも地上に帰還したときは無重力空間の癖でコーヒーをテーブルに置かずにぶちまけたりしたんだろうか、マークだけでなくクルーの人たちがそれやってると思うと可愛いですね。もう最後の宇宙空間で必死に手を伸ばしてお互いの存在を掴もうとするところと、伸ばされたケーブルのオレンジが美しくて、一連の映像は映像美の勝利として額物に収められてほしいと思いました。人間は美しいものを見ると額縁に入れたくなる習性があります。永遠にそこで時を止めてくれ。そらファウストもそう言う。宇宙、好きだな…………の気持ちが新たになり、人類の知性と善性を信じていきたいし、信じていってくれ、この世、と強く思いました。畳む いいね ありがとうございます! 2024.6.2(Sun) 19:30:42 つらつら
主人公は1年半シャワー浴びてないけど俺たちは2時間で余すところなく人間の知性と善性が浴びられる。すべてがネタバレ。ダクトテープを持て。#映画感想
「いつか観るか」の箱に入れておいたのをようやく観ました。なんかちょいちょい配信から消えるので……これは配信作品にずっとつきまとうヒリついた緊張感ですな。冒頭から関係ない話をする。はい。
そもそも俺は人間の知性と善性に基づいた行動をする人間の映画が好きで(爆発とか膨大な人死にとかは別カテゴリです)、極地(極限の土地の意味。もちろん宇宙も含む)においての集団行動ができる人間個体には基本的にそれが備わっているのでその時点で爆裂に愛なんですが、「オデッセイ」は地球の原理も通用しないような火星という土地において人間が今まで培ってきた先人たちすべての知識の結晶をときおり「そうはならんやろ」のエッセンスでやっていくので本当に大好き映画になりました。
人間の顔がすぐに識別可能にならないので最初にアンテナにぶつかって吹っ飛ばされたのがマークだとぱっとわからなくて、ヘルメットで顔面の視認領域が狭いのと砂嵐の視界の悪さで完全にやられているのあまりにもリアル……と一人で画面の前で息止めてました。息をしろ。
潜水艦映画とかで水が入ってきて視覚的に空気がなくなるのを見るのがダメなので、思ったよりあっさりと置いてきぼりにされたのは船長の判断に感謝したんですがその後のマークの覚醒からセルフ手当までの間はずっと眉間に皺が寄っていました。作中のみなさんと匹敵するぐらい眉間に皺寄せてた自覚がある。あと最初はムキムキだったマークが後半でMAVに乗って宇宙服に着替えるあたり、もうガリガリになっちゃってて宇宙空間で一人でぎりぎりの生存をする過酷さが目に見えて腹筋に力が入った。生活ではなく生存をする日々のこと。
宇宙ステーションとか構造物として大好きなのでその辺が垣間見えるあたりはずっとにやけていたし、マークが自分の死を両親に伝えるのは船長にお願いしたいってメッセージを残しているところで泣いたし、砂と岩だらけの火星をローバーで進むマークをはるか上空から写したなんでもないあいまのシーンで以前に観た「おやすみオポチュニティ」を思い出して爆裂に泣いたし、宇宙空間に設置した基地で音楽流すのもあまりにも人間の祈りすぎて泣いた。
有機無機にかかわらず、人間に最後に残された善性は祈りになるんだなあ、と思いました。祈りとは人間に残された最後の、本当に最後の足掻きを一押しするもので、それを叶えるのは実際にその場にいる人間であって祈っている遠くにいる人間には何の関係もないのだけれど、それでも遠い宇宙の目には見えないところで起きていることがらについて、そこに自分たちと同じ人間のいのちが一個あって、そのたった一つに手を伸ばすことを諦めないのはこの世に存在するありとあらゆる言語すら届かない域にある人間同士の底の底の一番底にある希望って名前の祈りなんだよなあ。
LotRのオタクなので途中で急に指輪物語ネタ挟まったの笑っちゃったし、そこにおるのショーン・ビーンやんけ……でニヤニヤした。珍しくショーン・ビーン氏が死にませんでしたね。へへ。あと登場人物全員頭がいいので出てくるセリフもすらっと頭が良くて「あ〜たまがいい〜〜………」ってずっと言ってました。
可否を問うてまず方法が返ってきたとき「で、それって英語で言うとなに?」って言えるのすごくない?みんなずっと英語喋ってんのに?めちゃくちゃ良い言い方するやんけ……好き…………そんで全員の返事がイエスなのも好き………あんなに自分の子供に会えるのを楽しみにしていた人がスッとイエスを返すの、好き。自分の今後の人生で、そうだよね、助けられるかもしれない人間を助けないって選択肢がある人間は宇宙にそもそも来られないよな。
なのに急に海事法を持ち出して宇宙海賊を名乗り出すの、ほのかな精神的ストレスによる狂気が滲み出ていて好きだし、船のオタクをやっているので満面のにこやかが出たし、自分たちが立っているのは確かに地球ではないにせよ地表であるのに、だからこそ宇宙の全てを「海」と解釈しているの本当に人間が地球上から離脱できていない、根付いている感性で愛した。人間がこの水の惑星から出立しそこを変える場所だと認識している限り、すべての科学は宇宙を空ではなく海に分類するのだ…。
ダクトテープ先輩が相変わらず万能アイテムの扱いで毎度毎度活躍するたびに手叩いて喜びました。だ〜ははは!!!いけんのかい!!!!!!!
マークが終盤で自分の足元にある新芽に火星でじゃがいもの新芽にかけたのと同じ声掛けするの、全人類が好きな要素のたたみかけで本当に良かったですね。ところでマークも地上に帰還したときは無重力空間の癖でコーヒーをテーブルに置かずにぶちまけたりしたんだろうか、マークだけでなくクルーの人たちがそれやってると思うと可愛いですね。
もう最後の宇宙空間で必死に手を伸ばしてお互いの存在を掴もうとするところと、伸ばされたケーブルのオレンジが美しくて、一連の映像は映像美の勝利として額物に収められてほしいと思いました。人間は美しいものを見ると額縁に入れたくなる習性があります。永遠にそこで時を止めてくれ。そらファウストもそう言う。宇宙、好きだな…………の気持ちが新たになり、人類の知性と善性を信じていきたいし、信じていってくれ、この世、と強く思いました。
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