No.63, No.62, No.61, No.60, No.59, No.58, No.57[7件]
一次創作,擬人化
擬人化:空を飛ぶひと
メタい話しよう」の後に描いたメーカー擬人化(ロッキード・マーティン社)の漫画です。作中にライト兄弟についての本が出てきたの嬉しいね、と言う話。#GAS
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一次創作,擬人化
擬人化:「メタい話しよう」再録
2022年8月13日に発行した同人誌「メタい話しよう」の再録です。「トップガン マーヴェリック」を観てどうしようもなくなった人間の叫びみたいな本です。軽い気持ちで読みましょう。ページ番号の抜けは表紙・裏表紙裏の白紙部分の省略です。#GAS

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日記:いろいろやりました。
汗をかく時期に向けて白Tシャツを新しく買いました。夏に白しか着ないのは単純にめちゃくちゃ汗をかいて見苦しくなる(自分が目に入って嫌)のを避けるためです。もう食べ物やみ物をこぼすという自分のおっちょこちょいと天秤にかけても汗で変色する方が嫌。

それに合わせてではないんですが、昨日一日少しばかり体調が低迷していて寝転がっていたりする時間が多かったので自分の買い物をすませてきたりなんだりしました。最近少し考えていることがあって、本来はもっと早くからそうしておくべきだったお金の動かし方(つまり貯蓄をもっとまじめにやるということ)に取り組み始めていて、改めて生活のもろもろを見つめ直している時期です。とはいえ特に変わったことをしていないんだけれども……少しずつ何年も動かしていないものを捨てたりとかそういう小さなことです。
何か一つものを増やしたら何か一つものを減らしたいので、しばらく着ていない服などを回収に出したりなんだりしたいなあとぼんやり思います。

加えて、昨日は体調が低迷していてもできる作業としていままでPixivに掲載していた小説をばんばん自サイトに移動させました。Pixivはもともとイベント参加のお知らせ用として運用していたので、特に積極的に活用していたわけではないのですが(単にユーザー数が多いのでタグを複数つけるだけでもそれなりに宣伝効果はあった)、ここ最近のなんやかんやを見て一応のために作品を非公開にしておこうという試みです。
AIもなあ………Misskeyの方に寝起きの長文を投げたこともあるんですが、今のところ技術(絵を描くためのツール。Photoshopとかと一緒)としては賛成なんですが、大前提としての権利問題などがあまりにも杜撰なまま一方的に悪意のある使われ方をしている、そういった使い方をするユーザーにおもちゃにされているという印象が強いので立場上は反対になるんでしょうか。少なくとも自分の描いたり書いたりしたものが勝手に学習元にされるのは複雑な感情があります。たとえすべての創作物は過去の創作物からの組み合わせであったとしても。
一次創作
創作:写真から描き起こす。
2016年5月1日(Pixiv投稿日)のメモが出てきたので。1〜4枚目が説明で5枚目は作例です。古写真加工は幕末古写真ジェネレーターというツールを利用しています。#自分メモ

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二次創作
二次創作:君がくれた朝焼け
2021年12月26日初出(Pixiv)皆守甲太郎のこと全然わかんないまま17年くらい経ちます。そう言う話です。ネタバレを含みます。#九龍妖魔學園紀

無駄に三回、シャープペンシルの尻をノックしてようやく、判別のつかなかった感情の枠組みを怒りだったのかなと推定することにした。
死ぬような思いをして結局は手柄を横取りされたような任務でも、その感情は一切排したレポートというものを書かなければならなくて、素晴らしいことに俺はそれを事前に一度手書きで組み立てるという作業をするのだ。先輩方には鼻で笑われてるけども。
紙面から排した感情は、排された感情は、その真っ白さに跳ね返されてもやもやと胸の辺りを圧迫してくる。そのもやもやから目を背けたくて始めた作業は、学生の部屋に似合いの簡素な机の上にも持て余されて、ついにこの根城いっぱいにうっすらと沈殿してしまった。
すでに決まった結果はあまりにも大きくて頑丈で、ちょっとやそっとでは絶対に、たとえどんな準備をしていたとしても「そう」なるしかなかったようにまぶたの裏にこびりついていて、いつなんどきそれを振り返ろうが、いま抱いている感情を明確に思い出せるんだろうという確信ですらある。己を信じる第一歩はすべての己を疑うことで、一夜明けて八時間寝たそうとう冴えているはずの頭で何度「そうではなくない?」と問いかけたところで出てくる答えが一緒なのだからたまったものではない。
否定を寄越す相手はいない。そんな問答がどれだけ頭の中で余計なことを考えさせるか、だとしたらもっとあらゆるものを削ぎ落としておけば良かったと後悔が喉を迫り上がってくる。
机に向かって答えが出ないなら、とこれまた簡素なベッドに寝転んでみても、なんやかんやと人からもらったものたちが徐々に隙間を埋めて行った結果、書き物をするときにどうしてもどけたいものの、調理器具を床に置くのも気が引けてベッドの足元に鎮座することになる、その銀色の寸胴鍋がぎらぎらと視界の隅を焼く。
ぐぅ、ともうぅ、ともつかない唸りが喉だけ震わせて、結局気づけば食いしばっている歯の隙間から漏れ出ていく。
「さいしょっから、」
最初から、傷つけてばかりいたのは、たぶん、俺の方なんだろう。
隣に居づらくさせていたのは。それでも馬鹿みたいに些細なことで笑わせて、くだらないことで盛り上がって、「そう」させていたのは。
最後にそっちを、選ぶくらいには。
「──……あっべ、歯ぎしりしすぎて奥歯欠けたやつって経費でなんとかなるか?これ……?」
いっそ根本から抜けてしまえば戦闘中のどうとやらでごまかしも利くだろうに、大規模な戦闘が終わってひと段落ついた日中に、そういえば歯が欠けていましたなんてどう考えても追求される。
「いやいやいや新人だし……多めに見ろ……はぁ?……………」
てのひらの上ですら見失いそうな小さな骨の欠片は不釣り合いなほどに白くて、骨なんだよなという属性を主張してくる。どうした、それを見せるの、俺でいいのか。
「おれになにみせたかったの──?」
遠く、ためらいがちなスリッパのやる気のない足音がする。
しばらく待てばこの部屋の前でためらいがちに立ち止まって、きっとその長い指の関節が控えめにドアをノックする。きっと俺はどうぞと言うし、開いてるよって言うかもしれない。
右手に欠けた歯を握りしめて、ゆっくりと体を起こす。今になって欠けた奥歯のあたりに遡った血流を感じる。どうやら緊張しているらしい。
引きずるような足音がドアの前で止まって、静かな部屋にノックの音が響く──俺はいつまでも動けないでいる。畳む
一次創作,擬人化
擬人化:君と箱庭の空
2017年11月12日初出(Pixiv)郵船さんと横船さんの関係性が萌える、というだけの話です。「擬人化四季報」に寄稿したので、ちょっと火がつきました。本文後に登場人物などの説明。#GAS

触れた手のひらに伝わるあまりにも直接的な骨の感触に、横船は思わず眉が寄る。
「おっまえ……」
「何だ、離せ」
返ってくるのは予想通りの声質。慣れたものだ、怒っているわけではないとわかるが、あと一歩のところでもある。
元はと言えば横浜市民の憩い場になって久しい娘(男)からの深刻そうな相談だった。
「郵船のお父様がね、また最近ちょっとお痩せになったように見えるの」
「お痩せにってあいつもう減るとこないじゃろ」
「ないと思いますでしょ?どうもあったらしいんですのよ……氷川の気のせいと思いたいですけど」
気のせいじゃないぞ氷川、と心の中で思念だけ飛ばしておく。受信ができたかはわからないが、おそらく何かしら飛んで行ったことだろう。
「お前なー、もうあばらゴリッゴリじゃねえか、ちゃんと食べてんのか?」
「食べ」
「おいそこで止めんな、顔を!逸らすな!」
長年の付き合いは三桁を越えた、お互いの扱いも慣れたものだ。
元々彼女は細かった。初めて出会った時から、華奢という形容は似合わないけれど、造船所として成り立った己と比べなくても細かった。どうやってその骨とうっすらした肉と皮だけであんなにも色々なものを踏みしめて乗り越えてこられたのかと思う。
その肉と骨の内に秘めるものはあまりにも大きくて、強い。それは十分すぎるほどわかっているけれど。
「成田の方でなんぞやいやいとやっとるんじゃろ、ちゃんと寝てんのか」
「なんで知ってる」
「お前なー、俺はもう天下の三菱じゃぞ。いやでも耳に入ってくるんじゃ」
これは少し嘘があって、本当は自分から情報収集をしているのだけれど、ばれたところであまり結果に変わりはない。慣れたものだ。
三菱、と己の所属を指すときに彼女が少し揺らぐのも。お互い、慣れてはないらしい。
約束もなしに乗り込んだ本社で、部屋に入るなり怪訝な顔のままその場に立たせてあばらに触れた。こっちの方が慣れてしまってはいけない気がする。
「ええーお前ほんと…どこにこれ以上減るもんがあるんじゃい……おかしいじゃろ……物理的に…」
「物理」
「質量保存の法則とかそのあたりが乱れとるぞ絶対」
「燃焼するのか、あたしは」
自然ため息は大げさになり、あと一歩の限界値が残り半歩になる。
そも人間ではないけれど、人間を基盤に成り立っている概念だ。寝食が必要な理由も始まりからわかっているはずなのに、何かが理解しているはずなのに、彼女の中の別の何かはそれをねじ伏せて摂取するエネルギーをすべて己の行動に費やしてしまう。
休むことをしないのではないだろう。必要な分はきっちりと計画されているはずだ。なまじ長生きしているだけあって、己の限界を見極めるのは早く的確であるはずだ。慣れたものだ。
見上げた顔は微塵も疲れを感じさせない。ただ、眉間のあたりに穏やかではない空気がある。理由はうっすら知っている。
本当のところは干渉できない。本当のこころは干渉できない。
「なんで、なんで俺お前にこんな頭悩ませてるんじゃろな…」
「悩まなくていいと言ってるだろう」
「おー、うるせーうるせー。そういうのは昼飯食ってから言えー」
時刻は正午過ぎ。どうせ朝に何か口にしただけで今の今まで座りっぱなしだ、大した消費もしてないと言い聞かせてろくなものも口にしていないだろう。机上の乾いたカップの中に、完全に乾いたコーヒーの色が物語る。このひとなにもたべてないです。
「美人薄命っていうじゃろ良い加減にしろ」
「言う相手を間違えてないか」
「美人じゃろが」
いつもならここで残りの半歩、歩み切ってしまっている。文字通り首根っこ掴まれて放り出されるのがオチだ。
ただし、時刻は正午過ぎ。燃料切れの体内もまた事実。迫力のある顔と、深いため息で事は済む。慣れたものだ。
「ここで立ち話してても始まらん、お前もう何でも良いから食べたいもの言え」
長く深い沈黙は想定内、少し視線が泳いだ後の回答は想定外だった。
「……シュークリーム」
「しゅうくりいむ」
「chou à la crème」
「憎いほどネイティブ」
場所は東京丸の内。およそ何でも、あるものはある。なにせ起源は岩崎弥太郎、呼ぶ人が呼ぶ三菱ヶ原、己も相手もそこに還ると言っても過言ではない。
「うん、まあ…俺この辺詳しくねえけど…なんかあるじゃろ、店」
「あるな。受付で聞いてこい」
「おう、そうするわ。ちょっと待っとけ」
簡易ながら十分な存在感の応接ソファに座らせて、これまたノックの音が果たして通るのか不安になるような扉を抜ける。
気が変わらない内にと逸る足が転ばないようにだけ気を配る。
場所は東京丸の内、時刻はちょうど正午過ぎ、太陽は午後の眼差し、空腹が味方する。
手のひらには硬い骨の感触。皮一枚の下に通う血潮の鳴動まで感じられそうだった、大げさでなく。
氷川に聞いた、と素直に言っても良かったが、まだそれは最後の手段として取っておく。心を新たに前を向き、決意を新たに駆け出した。


ひとり、嵐のような来訪が去った静けさに取り残されている。
確かに空腹ではあったので、そろそろ切り上げてしまおうと思っていたところだった。
脇腹の少し上、ちょうどあばらの終わりのあたり、どこから見てもくびれなんてものはないが、体格の割に大きな手のひらに不満だったらしい。
「……わかってないな」
誰にも聞かれやしないから、と珍しく自室なりの油断で声に出す。
成田のごたごたは、きっともうすぐ片が付く。確かに少し切り詰めていたが、そこまで重労働とは思っていなかったのも事実だ。
「…わかってないぞ、ばか」
口にするのは何でも良かった。できれば軽いものだと良かった。それでも何だか真剣に見つめる視線で思い至った。
「横浜からだろうが、あいつめ」
望まれて、うまれた。言葉は同じでも望まれ方がまるで反対だ。
片や共倒れを危惧されて、双方から半分ずつ。片や京浜地区一帯から市民から、本当に必要とされて。
「一緒なら、」
一緒なら、きっとなんでもできると思った。
全くそうは、ならなかったが。
本当は、隣に座って、言葉もなくて、静かで良いのだ、こんな午後は。
時刻はちょうど正午過ぎ、太陽は午後の眼差し、空腹は静かに訴えてくる。
切れてしまえば回らない集中と思考回路。単純なものだと己でも思う。
疲れた目頭をもみほぐす指も、彼にしてみれば細すぎるのだろうか。人間と同じように影響しない時間の中で、多少は変化があったと思う。
最低限と整えている爪には一本の筋もなく滑らかで、短く端正に揃えられた丸みが気に入ってはいる。少しだけ節が目立つが、無表情ではないと思う。
気に入られようとあえて思った事はない。嫌われてると思っているならそのままでいい。
気づかないでくれ、と思う。これ以上重荷になってたまるかと思う。決別の仕方が仕方だけに、そもそも彼は己に対して引け目があるのはわかっている。嫌という程。
心配をかけるつもりはなかった。動向を知られる気もなかった。愛しい娘の観察眼を、少し侮ってはいのかもしれない。
口にするのは何でも良かった。味の有無すらどうでもよかった。ただ隣に座ってうるさくしながら何でもない話ばかりしたかった。できれば明るい話を。本当は、
「お前と一緒ならなんでも良いんだ」
溢れた言葉はおそらく誰も聞き取れない振動で目の前の空気を震わせただけだった。

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娘(男):氷川丸さんのこと。女装おじいちゃんなので。また、氷川丸さんは郵船さんのことも横船さんのことも「お父様」と呼びます。郵船さんが自分のところの船には全部自分を「父」と呼ばせているだけです。

成田でやいやい:NCA設立のあたりです。時系列をお察しください。昭和50年代丸の内にはたしてシュークリームがあるのか。きっと洋菓子店はあったと信じたいです。余計な時系列を作らなければ良かったのですが、郵船さんがあの規模になってから痩せるようなことがあるのはきっとこのときくらいだと思います。

シュークリーム:幕末の横浜外国人居留区ですでに西洋菓子店が営まれており、一説にはメニューにシュークリームはなかったそうですが、当時すでに本国ではメジャーなお菓子であったのでおそらくそこが日本に入ってきた最初では、ということです。
なお、そこに日本人菓子職人が修行に行きその後に日本で初めてシュークリームを発売する菓子店を開店したとか。畳む
一次創作,擬人化
擬人化:いちめん、ゆきすぎる
2014年2月8日初出(Pixiv)本庁さんがのろけてるだけです。ひさなさんの擬人化宗谷ちゃんをお借りしています。#GAS

一面の白色というには濁りすぎた、それでも全面的な無彩色。
右から左へ、目線と並行に飛んでゆく霞のような白色。
「やめた方がいいんじゃないですかね」
左からの忠告。
「電車、止まってるそうですよ」
二度目は適切な報告を含んだ指摘。
「ていうか、やめろ」
三度目は容赦のない警告を一段飛ばした、不穏。
ガラス一枚、人の気配に従順な扉の向こうは無彩色。時折すぎる傘の色合い、マフラーのたなびくさまにはっとする。
「ちなみに横須賀は完全に孤立しました。さっき」
「…行かないよ、そこは」
よりにもよってこんな天気に、まだ距離を測りかねているところになんて。
それでもこの日の約束のためにいろいろと明言できない部分で暗躍を重ねて、息つく暇をひねり出したのだ。おいそれと諦めのつくものではない。
自然に対してあらがうことが、なにより無駄だと知っているけれど、それならそれで渡り合うくらいはできるのだ。
「京太郎は、帰りどうするの」
場所は東京、お台場。
諸事情でお世話になっている放送局の球体が、霞んだ幕の向こうにあるのだろう。
隣から親切な停船命令を静かに発する彼は滑らかに指先で眼鏡の位置を直した。
「こんな天気ならしゃあねぇです。直行します」
軽くため息、つくづく真面目な彼なので本来であれば一足飛びに動ける距離を、きっと満員電車や疲れた乗客にまぎれようとはしたのだろう、ぎりぎりまで。
そんな中を、待っていてくれるだろうか。
そんな中を、連れ立って歩いてくれるだろうか。
寒さには慣れているだろう、なにせ南の果てまで六度行った。
冷たいのには慣れているだろう、なにせ北の大地で氷を割って走っていた。
だからといってそれらが全て堪えないかと、それらの全てを気にも留めないということではない。
「だから素直にやめとけって言うんですよ」
でもね、と咄嗟に言い訳の前段階が口を出る。出そうになるのを、のどの奥で押しとどめたのは及第点だろう。
素直になるなら、楽しみなのだ。
眠れないほど、ではないけれど。少し、行動の些細な端々に落ち着きをなくすくらいには。
「…かまくら、とか」
「ちょっと足りねえんじゃないですかね」
地名でないかは確認されない。
雪玉を投げあうには人数が足りない。かといって雪玉を重ねるだけのだるま造りはあまりに体を動かさない。
「最後にいいますけど、天気予報じゃこのあと大荒れだから小さいお子さんとのお出かけは特に控えろって」
「一応、大きいです」
「お子さん部分を否定しろよ」
想いも寄らなかった部分へのつっこみに少し驚いた顔をしていると、じろりと一瞥を食らう。
そのあとのため息は、自分自身への諦めと納得を呑みこんだ反動だろうか。
「寒くなったらすぐに屋内に入ること。できれば暖かいものを摂ること。いざとなればまつなみに言ってください、甘酒くらいならすぐ出ます」
「まつなみは…どこへ行くんだろうね。方向性」
「迎賓艇ですから。そしてあなたが方向性について言うな」
全ては一存、ではあるのだけれど。個として確立した先のところまでは、影響できない。
無力だな、と思うことはなくなった。力が足りないな、とは常日頃から思っている。
己の手のひらの小ささを思い知ったいくつかの出来事と、それに付随する感情は長い時間に晒されていつか口角を上げられる日が来るだろうか。
「…あのね、わかってないようだからあえて言いますけど」
「うん、なに?」
呆れたような、諦めたような、それでいて少しだけ妬いているような、加えて少しの、嬉しそうな、送り出す、それに似た、
「そんな顔してる暇があるなら、さっさと迎えにいけってんですよ」
暖房が効きすぎてもない適温の屋内、寒すぎて色づくでもない頬の赤みを自覚しろというのが難しい話だ。
けっ、とひときわ大きく呆れられて雪降る中に追い出された。
「待たせてんでしょ、せいぜい走ったらいいんです」
吹雪の中に傘はなし、風はあいにくの向かい風。まともの語源は順風だったかといまさらそんなことを考える。
この雪を走り抜けて、あるいは走れずに歩くはめになったとして、待たせた人に合う頃に頬の赤みは意味を変えているだろうか。
例えば、同じようにその頬がうっすらでいい、色づいていたら、その意味するところが同じであるなら、もうそれ以上は望まない。
きっと手袋の中の指先も手のひらも着く頃には冷えきってしまうだろうけれど、冷えただろう頬に触れる理由が一つある。ひとつあるなら、十分だ。
息を吸う、走り出すための準備にしては温度差でむせそうになるけれど、言われた通り待たせているのだ。
純白というには濁りすぎたそれでも無彩色、そのオレンジは燦然と輝かずとも確かに目につく色をしている。目につく理由は、それだけではないにせよ。
吐いた息は真っ白に煙ってあっという間に流された。
ああどうかこの鼓動の上ずりが、違う意味になりますように。畳む

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